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ボイスドラマの内容
登場人物
- 彼女/城田(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。スポーツジムで働きながらミュージカル女優を目指している
- 彼/一ノ瀬(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。コンビニでバイトしながら演劇を続ける劇団員。城田とは同級生で友達以上恋人未満
Story〜「ダンサー・イン・ザ・ライフ/新生活/後編」
彼: | 「おつかれ!終わったな!!」 |
彼女: | 「おつかれさま!」 |
彼: | その日は大学演劇部の卒業公演だった。 卒業公演が終わったら芝居とは一切縁を切る、という部員も多い。 恋人役の彼女が手を差しのべてくる。 彼女は、高校時代から友達以上恋人未満。 どちらかと言うと、ほとんど友達なんだけど。 |
彼女: | 「あとは卒業式ね」 |
彼: | 「来月からはオマエ、社会人か」 |
彼女: | 「あなたもでしょ」 |
彼: | 「オレの本業は役者。昼の顔はただのアルバイトさ」 |
彼女: | 「私だって目指すのは、ミュージカルの舞台よ」 |
彼: | 「まあいいさ、これからは別の道を歩くってこと」 |
彼女: | 「そっか・・・」 |
彼: | 2人ともたぶん同じことを考えているのだろう。 卒業したら、それぞれ家を出て一人暮らしをする。 それでも、2人の間から恋人というワードは遠ざかり、 今よりもっと友達の方へ傾いていくに違いない。 |
彼: | 「なあ」 |
彼女: | 「なあに?」 |
彼: | 「家具、見にいかないか?」 |
彼女: | 「え」 |
彼: | 「オレもオマエも、これから一人暮らしするんだろ」 |
彼女: | 「うん」 |
彼: | 「オレ、まだなんにも準備してないんだよ」 |
彼女: | 「じゃあ、あのアウトレットの家具屋さん行く?」 |
彼: | 「ああ、高校時代にオマエが背景係だったとき、よく行ってとこだよな」 |
彼女: | 「あのあとアウトレットからインテリアスタジオに変わって オシャレなインテリアがいっぱいあるのよ」 |
彼: | 「へえ」 |
彼女: | 「あなた、センスないから、 コーディネーターさんにコーディネートしてもらった方がいいと思う」 |
彼: | 「悪かったな」 |
彼女: | 「ふふ・・・」 |
彼: | 「新生活応援?」 |
彼女: | 「応援してもらったら?」 |
彼: | 壁に大きくディスプレイされた「新生活応援」のPOP。 ベッド、ホームワーク用のデスク、カウチソファ、TVボード・・・。 彼女が大好きな北欧スタイルのディスプレイから、 今流行りのブルックリンスタイルまで、見ているだけでワクワクするもんだな。 |
彼女: | 「家具を選ぶ基準って、なんだと思う?」 |
彼: | 「え?っと、耐久性とか機能性だろ?」 |
彼女: | 「もちろん、それもそうだけど、一番大事なのは”夢”じゃないかしら」 |
彼: | 「夢?」 |
彼女: | 「頭の中で、自分の部屋に、あなたが気に入った家具を置いてみて」 |
彼: | 「う〜ん、・・・よし、置いた」 |
彼女: | 「その家具の中で暮らせば、”夢”を失わずにいられる?」 |
彼: | 「ああ・・・、そうか・・・」 |
彼女: | 「難しいけど、それが選ぶ基準じゃないかしら」 |
彼: | たいせつなものは目に見えない、ってことか。 ”夢”がなかったら、生きていく意味もない。 それは、彼女だって同じだろう。 お気に入りの家具に囲まれて、”夢”をつかむためにがんばる2人。 そんな姿を頭に描きながら、 新生活をディスプレイした家具から”夢”を探していった。 |
彼: | 大学卒業から10年。 彼女の夢はついに叶った。 昼間、スポーツジムで働きながら、夜オーディションを受ける日々。 やがて、ミュージカル劇団から声がかかり、 ブロードウェイでも上演される有名な作品に出演が決まった。 ステージのセンターに立ち、満員のオーディエンスの前で歌い、踊る。 客席の最前列で祝福するオレの声は歓声にかき消されていく。 カーテンコールのあと、舞台裏からオレのところまで走ってきた彼女は、 |
彼女: | 「今度はあなたの番よ!」 |
彼: | 「ああ!そうなったら、君との新生活へ誘うよ!」 |
彼女: | 「なにそれ」(笑) |
彼: | 目には見えないたいせつなもの。 今度はきっと、オレが手にいれる。 |