「ベッドサイドストーリー」前編 2022年8月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 男性(16-61歳)・・・高校1年生のときに知り合った彼女にプロポーズして結ばれる
  • 女性(15-60歳)・・・中学3年生のときに彼と知り合いさまざまな出会いの中で彼を選ぶ

Story〜「ベッドサイドストーリー/彼-16歳:彼女-15歳」

彼:「あ!」
彼女:「あ・・・」
彼:「ご、ごめん」

最初は、家具に囲まれたインテリアのイベントが舞台だった。
母に請われてカタログをとろうとした僕の指先は同じ目的で現れた彼女の掌に触れてしまったんだ。
彼:「ベッドのカタログをとろうと思って・・・」
彼女:「同じ学校・・・?」
彼:「え?」

そうか、僕は学校帰り。
制服のまま、両親と待合せしてインテリアのイベントに来ていた。
彼:「君もうちの高校?」
彼女:「ううん、私はまだ中三。同じ学校の付属中学なの」
彼:「中三?そんな大事なときにこんなとこにいていいの?」
彼女:「パパが、受験がんばるようにって、新しいベッドを買ってくれるの」
彼:彼女の斜め30度上から、僕の顔をじっと見ていたのはスーツを着た彼女の父。
僕はぎごちない会釈をして、すぐに視線を外した。
彼女:「なにを見にきたの?」
彼:返事をしようとする母を制して僕が答える。

「君と同じ。ベッドだよ。今は布団だから」

僕たちが見ていたのは、ダブルクッションタイプのマットレスをのせたシングルフレームのベッド。
僕は彼女の部屋を想像して少し照れながら、カタログをめくった。
彼女:「じゃあ、また」
彼:「うん、来年から学校で会えるといいね」

ところが、翌年も、またその翌年も、学校で彼女の姿を見ることはなかった。
彼女は遠い街に引越し、僕はこの街で就職をした。

Story〜「ベッドサイドストーリー/彼-24歳:彼女-23歳」

彼女:「え?うそ!あなた・・・」

次に彼女と出会ったのは、8年後、24歳の夏。
スケールアップしながら続いていた、同じインテリアのイベントだった。
彼女:「私たち、よっぽどベッドに縁があるのかしら」
彼:「ホントだね(笑)」

彼女の横には日焼けしたブラウンヘアーの男性が値踏みするように僕を睨んでいた。
僕は、挨拶も早々にイベント会場をあとにした。
彼女:「待って」
彼:駐車場へ向かう僕を呼び止めたのは、1人で走ってきた彼女だった。

「どうしたの?彼氏を1人にしていいの?」
彼女:「彼氏じゃないから。・・・私、・・・私・・・」
彼:「え・・・」
彼女:「この街に帰ってきたの・・・あのベッド、まだ使ってる?」
彼:そのとき、彼女の瞳が潤んでみえたのは、僕の淡い願望のせいかもしれない。
僕はあえて曇りのない笑顔で答えた。
彼:「使ってるよ。君は?」
彼女:「私も」
彼:彼女の笑顔の中に、ほのかな予感を抱きながら、僕たちはイベント会場をあとにした。
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