「Happy New Interiors!〜家具のイベント/後編」 2024年1月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 彼(38歳)・・・元バレエダンサー。膝を痛めてバレエを断念したが、思いは断ち切れず、ダンススタジオでインストラクターをしている。本職は広告代理店の企画部勤務。彼女のことを意識しているが、年齢差のコンプレックスがあり言い出せない
  • 彼女(26歳)・・・前編に登場した息子の姉。芸術大学出身。現在はフリーのイラストレーター。幼い頃からバレエを習い、いまでもダンススタジオに週3で通っている。ダンススタジオで知り合った彼とは月に何回か、食事に行くライトな関係

Story〜「Happy New Interiors!〜家具のイベント/後編」

<シーン1/ダンススタジオ>
彼:「はい、おつかれ!今日はここまでにしよう」
彼女:「おつかれさまでした!」
「お腹すいたな、軽くたべよっか・・」
彼女:ビルの2階にあるダンススタジオ。
通りに面した東側には大きな窓ガラスがはまり、灯りがともる頃には、外からダンサーたちの動きがよく見える。彼の指示で私の定位置はいつも窓側。私は、通りを歩く観客に向かってコンテンポラリーダンスを踊る。
<シーン2/レストラン>
「なんだか、浮かない顔だね」
彼女:え?私、浮かない顔なんてしてた?
ちゃんと彼の目を見て笑顔で話をしてたつもりだったのに。
こういうとこ、鋭い人だな。
「実は僕も、今日会社でちょっとミスしちゃってね。結構ひっぱるタイプだから」
彼女:そう?いつもカラっとしてると思ってたけど。
それに、僕も、って。私が気分下がってること、確信してるのね
「ああ、そういうときは、美味しいお肉をたべて・・・
あ、お肉好きだったよね?」
彼女:「はい」
「よし、じゃあ、今日はちょっと贅沢して、飛騨牛のフィレ肉とかいっちゃおうか」
彼女:「え〜」
「あれ?食べたくない?」
彼女:「あ、いえ、食べたいです」
オッケー、決まり。すみません、オーダーお願いします!
あっと、それから・・・
レッスンのとき以外は敬語っぽい言葉遣いやめてくれる?なんか、くすぐったくて、落ち着かないし
彼女:「っと・・・わっかりました〜」
「うん、それそれそれ」
彼女:タメ口とか、苦手なんだよなあ。
彼は、ちょっぴり強引だけど、なかなか1人で決めきれない性質(たち)の私にはちょうどいいかも。
それにしても、口の中で溶けちゃうくらい、柔らかくてジューシーなお肉。
「どう?美味しい?」
彼女:「溶けちゃった」
「あはは、そりゃ、シャトーブリアンだもの」
彼女:「ん〜!美味しい!」
「よかった。
それで、舌鼓を打っているところ悪いんだけど・・・どうしたの?なにかあった?」
彼女:「えっと・・・私、引っ越ししようと思って」
「え?引っ越しって?実家暮らしじゃなかったっけ?」
彼女:「あ、そうなんです・・・そうなんだけど(笑)
弟が社会人になって私の部屋を明け渡しちゃったから」
「え、じゃあ、いま、どうしてるの?」
彼女:「1人暮らし前提だから、いまは倉庫代わりに使ってた狭い部屋。
弟は2間続きのスイートになって大喜びしてるわ」
「そうか、そしたら明日家具見にいこうか?」
彼女:「家具?」
彼:「だって、家具ひとつで、お部屋は明るくあったかくなるんだよ」
彼女:「へえ〜」
彼:「ただの家具屋じゃなくて、すっごいところへ連れてってあげる」
彼女:彼はいつだって特別な場所へ私を誘(いざな)ってくれる。
これって、私が特別な存在ってこと?
ううん、考えすぎだよね・・・
<シーン3/イベント会場(インテリアビッグバザール)>
彼女:「すご〜い!」
「だろう?」
彼女:「インテリアのテーマパークみたい!」
「そこまでじゃない(笑)」
彼女:いやいや。十分にそこまでだし。
広大なスペースの大ホールにゆったりと並べられた家具たち。
ベッド、ソファ、食卓、デスク、雑貨・・・
いったい何台、何本、何点、展示されているんだろう。
ムートンの体感コーナーまであるし・・・
「寝転がってみたら?」
彼女:「いいのかなあ」
「もちろん」
彼女:店員より先に私を促す彼。
ベッドに敷かれたムートンのうえ、大の字になって寝そべる。
「気持ち良さそうだなあ」
彼女:ホントに気持ちいい。このまま眠っちゃいそう。
私の楽しそうな表情を見て、彼の口角がさらに上がる。
「電動ベッドにも寝てごらん」
彼女:「電動ベッド?私今年25歳だよ」
「いやいやいや、いま電動ベッドは若い人に人気なんだよ」
彼女:「ホント?」
「まあ、だまされたと思って」
彼女:「わかった・・・よいしょっと」
「よいしょっと??(笑)スマホにアプリを入れて」
彼女:「アプリ?」
「スマホで操作するんだ」
彼女:「すご」
アプリで時間設定すれば、朝ベッドが起き上がって私を起こしてくれるんだって。
しかも寝ているときイビキをかいたら、ベッドが感知して体を少し起こす?
気道を広げて快適な睡眠へ誘う?
寝る前はリクライニングさせたベッドで、読書したり、ゲームしたり、アニメを見たり、って・・・
ああ、怠惰な私になってしまう〜
「健康にしてくれるんだよ」
彼女:確かに。
私、朝起きるとき、足の浮腫(むくみ)とか結構ひどいからなあ。
ベッドのコーナーには睡眠アドバイザーもいて、そんな相談にものってもらった。
「小さなワンルームだったら、この電動ベッドがあればソファいらないよね」
彼女:あ、そうか。そうやって考えたら、コスパも高いかも。
それに、向こうには・・・羽毛布団のオーダーメイド?体型や好みに合わせて、この場で羽毛布団を作ってくれるんだ。
すごすぎる・・・
「楽しい?」
彼女:「うん。一日中見てまわりたい」
「じゃあ、そうしよう」
彼女:「え、いいの?」
「大丈夫大丈夫。ゆっくり見てまわれば、どうせ一日かかるよ」
彼女:「やった。
ねえ、あの一帯みて。75%オフだって。ここで全部家具決めちゃおうかな」
「いいんじゃない」
彼女:「じゃあ、次は食卓みたい」
「了解」
彼女:あれ?
私、なんかタメ口っぽい。
普段の私なら考えられないのに。
彼が作り出す、異空間に召喚されてしまったみたい。
「君の笑顔を見ているとね、本当に幸せな気持ちになれるんだよ」
彼女:「え」
BGM♪インテリアドリーム
「この時間が永遠に続けばいいのに、って」
彼女:「あ」
「あ〜、いやいやいや。冗談。冗談。忘れて」
彼女:忘れられるわけがない。
私も、幸せ。
愛とか恋とか、そういうのじゃなくても・・・。
会場いっぱいの家具に囲まれて、なんだか、現実のその先にある、不確かな未来が見えたような・・・気がした。
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