「聖夜の奇跡/IROTTA CHIC」後編 2022年12月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 彼女(26歳)・・・医薬品メーカー勤務のMR/社会人4年目。仕事に追われる毎日
  • 彼(24歳)・・・システムエンジニア/社会人2年目。彼女と暮らし始めて半年

Story〜「聖夜の奇跡/IROTTA CHIC/後編」

彼女:「がんばってなるべく早く帰るから・・・」
彼:TV電話に映る彼女の表情は、申し訳なさでいっぱいだった。
彼女は、医薬品メーカーに勤めるMR。
この時期、病床使用率が上がってくると、どうしても忙しくなってくる。
だから、僕たちのクリスマスは、家で過ごす”二人だけのクリスマス”。
料理の担当は、もちろん、僕だ。
彼女:「料理、無理しないでね。私、帰ってから作るから。
クリスマスに怪我なんてしちゃ、いやよ」
彼:ふふん。馬鹿にしないでほしいな。
この日のために、ここ毎日先に家に帰って練習していたんだから。
僕は念入りに部屋の清掃をすますと、クリスマスの食材を探しに街に出た。
断続的に流れる車の中から、煌めくイルミネーションに目をとめる。
そこは、彼女と喧嘩をした日に、偶然見つけたインテリアショップだった。
彼女:「イルミネーションって、見ているだけであったかくなる」
彼:「そうだね。喧嘩して凍てついた心も溶けるほどに」
彼女:「あら、別に私の心は凍りついてないけど」
彼:「そういうことにしておこうか(笑)」
彼女:「ユニコーン・・・」
彼:「え?」
彼女:「ほら、この絵、ユニコーンじゃない」
彼:「僕には普通の白馬に見えるけど」
彼女:「ユニコーンってね、清らかな乙女にしか近寄らないんですって」
彼:「ふうん」
彼女:「ノアの方舟にも乗ってたのよ」
彼:「そうなんだ」
彼女:「私の元にも来てくれるかしら」
彼:「も、もちろんだよ。君ならきっと、ユニコーンの背に乗ることだってできるさ」

こうしてクリスタルの白馬、いや、ユニコーンの絵は、
ぼくたちの家にやってきた。
雪解けの笑顔を思い出しながら、僕は駐車場へハンドルを切った。
彼女:「ただいま・・・」
「遅くなっちゃって、ごめんなさい・・・」
「もう、寝てるよね・・・」
彼:息をひそめた僕に気づかず、彼女はルームライトをつけた。
彼女:「あ・・・」
彼:「メリークリスマス。
どうかな・・・ホワイトクリスマスに・・・なったかな」

光の中。舞い散る雪のように、煌めくユニコーン。
そしてその横、ひときわ大きな、もうひとつのキャンバス。
ピクチャーレールからワイヤーフックで固定されているのは、
彼女:「・・・ヘプバーン!」
彼:それは、ユニコーンと同じく、クリスタルで装飾されたヘプバーンの肖像画。
まるで雪が舞っているように、光の結晶が踊っている。
彼女の表情にもみるみる光がさしてきた。
彼:「君、いつも、ヘプバーンみたいになりたいって言ってたよね」
彼女:「うん・・・」
彼:「賢者の贈り物にならないといいんだけど」
彼女:「ありがとう・・・」
彼女:「じゃあ私も・・・」
彼:「え?」
彼女:「Happy Holidays(ハッピーホリデイ)」
彼:「これって・・・」
彼女:「どう?」
彼:「スマートウォッチ?」
彼女:「だって、賢者の贈り物になるといけないでしょ」
彼:「ありがとう」
彼女:「あなた、プログラマーなんだから役に立ててね」
彼:僕のピクシーがいたずらっぽく笑った。
クリスタルの光が部屋の温度を上げていく。
今夜は冬の妖精と過ごすあたたかいクリスマスになりそうだ。
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