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ボイスドラマの内容
登場人物
- 彼女(26歳)・・・医薬品メーカー勤務のMR/社会人4年目。仕事に追われる毎日
- 彼(24歳)・・・システムエンジニア/社会人2年目。彼女と暮らし始めて半年
Story〜「聖夜の奇跡/IROTTA CHIC/後編」
彼女: | 「がんばってなるべく早く帰るから・・・」 |
彼: | TV電話に映る彼女の表情は、申し訳なさでいっぱいだった。 彼女は、医薬品メーカーに勤めるMR。 この時期、病床使用率が上がってくると、どうしても忙しくなってくる。 だから、僕たちのクリスマスは、家で過ごす”二人だけのクリスマス”。 料理の担当は、もちろん、僕だ。 |
彼女: | 「料理、無理しないでね。私、帰ってから作るから。 クリスマスに怪我なんてしちゃ、いやよ」 |
彼: | ふふん。馬鹿にしないでほしいな。 この日のために、ここ毎日先に家に帰って練習していたんだから。 僕は念入りに部屋の清掃をすますと、クリスマスの食材を探しに街に出た。 断続的に流れる車の中から、煌めくイルミネーションに目をとめる。 そこは、彼女と喧嘩をした日に、偶然見つけたインテリアショップだった。 |
彼女: | 「イルミネーションって、見ているだけであったかくなる」 |
彼: | 「そうだね。喧嘩して凍てついた心も溶けるほどに」 |
彼女: | 「あら、別に私の心は凍りついてないけど」 |
彼: | 「そういうことにしておこうか(笑)」 |
彼女: | 「ユニコーン・・・」 |
彼: | 「え?」 |
彼女: | 「ほら、この絵、ユニコーンじゃない」 |
彼: | 「僕には普通の白馬に見えるけど」 |
彼女: | 「ユニコーンってね、清らかな乙女にしか近寄らないんですって」 |
彼: | 「ふうん」 |
彼女: | 「ノアの方舟にも乗ってたのよ」 |
彼: | 「そうなんだ」 |
彼女: | 「私の元にも来てくれるかしら」 |
彼: | 「も、もちろんだよ。君ならきっと、ユニコーンの背に乗ることだってできるさ」 こうしてクリスタルの白馬、いや、ユニコーンの絵は、 ぼくたちの家にやってきた。 雪解けの笑顔を思い出しながら、僕は駐車場へハンドルを切った。 |
彼女: | 「ただいま・・・」 「遅くなっちゃって、ごめんなさい・・・」 「もう、寝てるよね・・・」 |
彼: | 息をひそめた僕に気づかず、彼女はルームライトをつけた。 |
彼女: | 「あ・・・」 |
彼: | 「メリークリスマス。 どうかな・・・ホワイトクリスマスに・・・なったかな」 光の中。舞い散る雪のように、煌めくユニコーン。 そしてその横、ひときわ大きな、もうひとつのキャンバス。 ピクチャーレールからワイヤーフックで固定されているのは、 |
彼女: | 「・・・ヘプバーン!」 |
彼: | それは、ユニコーンと同じく、クリスタルで装飾されたヘプバーンの肖像画。 まるで雪が舞っているように、光の結晶が踊っている。 彼女の表情にもみるみる光がさしてきた。 |
彼: | 「君、いつも、ヘプバーンみたいになりたいって言ってたよね」 |
彼女: | 「うん・・・」 |
彼: | 「賢者の贈り物にならないといいんだけど」 |
彼女: | 「ありがとう・・・」 |
彼女: | 「じゃあ私も・・・」 |
彼: | 「え?」 |
彼女: | 「Happy Holidays(ハッピーホリデイ)」 |
彼: | 「これって・・・」 |
彼女: | 「どう?」 |
彼: | 「スマートウォッチ?」 |
彼女: | 「だって、賢者の贈り物になるといけないでしょ」 |
彼: | 「ありがとう」 |
彼女: | 「あなた、プログラマーなんだから役に立ててね」 |
彼: | 僕のピクシーがいたずらっぽく笑った。 クリスタルの光が部屋の温度を上げていく。 今夜は冬の妖精と過ごすあたたかいクリスマスになりそうだ。 |