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ボイスドラマの内容
登場人物
- 彼女(21歳)・・・女子大学4年生。モダンダンス部に所属。自主講演を中心として幅広く活動中。ダンスと同時に声優の勉強も独学で始め将来の道に悩んでいる。誕生日は3月
- 彼(21歳)・・・大学4年生。野生生物研究会。彼女とは彼女が通う女子大の大学祭で知り合った。月1回の野外観察と彼女の合宿が重なった。誕生日は彼女と同じく3月
Story〜「Anniversary〜IROTTA CHIC/前編」
<シーン1/コテージ> | |
SE | (森の小鳥ー冬の鳥/シジュウカラやヤマガラなど) |
SE | (ドアを何度もノックする音) |
彼女: | 鳥のさえずりしか聞こえない静かな森。 私たちのコテージ周辺に不審者出没の情報がとびこんできた。 うそでしょ・・・ 冬眠から目覚めたクマじゃないの。 いや、そっちの方が怖いか。 私は、女子大の舞踊教育学コース4年生。 モダンダンス部の友だちと小旅行に来ている。 10月の自主公演、11月の大学祭と、大学生活最後の年を満喫した。 いまは卒業を来月に控えて友だちとの思い出作り。 こんなところに不審者? 私は震えながら、部屋の戸締りを確認する。 そういえば彼は? 確か、この近くでサークルの野外活動をしていたんじゃないかしら。 まさか、不審者って彼のことじゃ・・・ なわけないか。 私と同じ市内で理系の大学に通う、3年生。 彼と私はうちの大学祭で知り合った。 |
<シーン2/コテージ> | |
彼女: | 女子大の学祭名物、フランクフルト屋台。 私は給仕をしながらお客さんのリクエストでダンスを踊る。 なのに、そんな私には目もくれずに夢中でフランクフルトを食べ続ける彼。 その食べっぷりが面白くてじっと覗き込んでしまった。 彼は、 |
彼: | 「僕の顔になにかついていますか?」 |
彼女: | とつぶやき、その言葉もツボにはまって笑いが止まらなくなっちゃったんだ。 結局、笑い過ぎたお詫びに私から彼をお茶に誘い、それからたま〜に連絡するようになって今に至る。 その彼も野生生物研究会の活動でこの森に来ているはずだ。 といっても、今年の1月以来彼の顔は見ていない。 就職先の研修やら卒業論文やらで忙しく走り回っている。 こんなときなのに、彼と最後に会った日のことを思い出してしまう。 あれは・・・ 初詣のあとに立ち寄ったインテリアショップ。奥に囲まれたコーナーへ彼が吸い込まれていった。 |
<シーン3/インテリアショップ(IROTTA CHICコーナー)> | |
彼: | 「ちょっと、こっち来てよ」 |
彼女: | 「なあに?」 |
彼: | 「なんか、このエリア、煌めいてないか」 |
彼女: | 「え?・・・わあ〜」 |
彼女: | そこは白とピンクを基調にした、プリンセス系のお部屋。 シャビーシックなピンクで彩られた壁紙とラグマット。 ラメを散りばめた白いダイニング、ソファ、ロッキングチェア、ベッド。 |
彼女: | 「まるでお城に住んでいる、お姫様のお部屋みたい」 |
彼: | 「はは、さすが声優を目指しているだけあって、表現力が豊か」 |
彼女: | 「眠っている間に異世界召喚されて、こんなお部屋で目覚めたい」 |
彼: | 「出たな、異世界召喚アニメフェチ」 |
彼女: | 「だってやっぱり憧れちゃうもん」 |
彼: | 「まあ、僕はこっちの部屋かな」 |
彼女: | 「うわ、楽しそう」 |
彼: | 「この巨大なホワイトタイガーのぬいぐるみと一緒にカラフルなソファで寝転びたいな」 |
彼女: | 「ふふ、あなたらしい」 |
彼: | 「ゴリラとかバイクのオブジェもあるんだ」 |
彼女: | 「おもしろ〜い」 |
彼: | 「なんか、みんなキラキラしてるね」 |
彼女: | 「家具屋さんなのに楽しい」 |
彼: | 「お、この部屋もすごい」 |
彼女: | 「どれ?」 |
彼: | 「ほら」 |
彼女: | 「絵画?」 |
彼: | 「みたい」 |
彼女: | 「絵画だけど、全ての絵がキラキラしてる」 |
彼: | 「ホントだ」 |
彼女: | 「クリスタルかな」 |
彼: | 「しかも名画や風景から映画の1シーンまでいろんなのがある」 |
彼女: | 「うん」 |
彼: | 「さあ、あけてごらん」 |
彼女: | 「うん」 |
彼: | 「この映画って、好きだったんじゃない?」 |
彼女: | 「あ・・・」 |
彼女: | 私の目の前に現れたのは、『ティファニーで朝食を』のラストシーン。 黒いドレスのヘプバーンが早朝のニューヨークを歩いている。 しかも等身大のアート。 ドレスの部分にはラインストーンが散りばめられている。 |
<シーン4/コテージ> | |
SE | (部屋の電話のコール音) |
彼女: | 不躾に鳴り響くコール音。 私は束の間の現実逃避から、現実世界へ呼び戻された。 |
彼女: | 「もしもし・・・」 |
彼女: | 電話は一緒に来ているモダンダンス部の仲間。 なんと、不審者が館内にいるかもしれないと告げて電話を切った。 不安と緊張のボルテージは一気に最高潮に達する。 と、そのとき・・・ |
彼女: | 「うそっ!?」 |
彼女: | 私は他人(ひと)から見たらおかしいほどに狼狽える。 ドアから一番離れたベッドに背中を押し付け、身構えた。 そこへ、友人の声で、 ”早く開けて!” ”急いでここを出るの!” という、焦って慌てた怒鳴り声が耳に飛び込んでくる。 け、警察! そうだ、警察に電話しなきゃ。 ”ねえ開けてよ!” |
彼女: | 「待って、先に警察に電話するから」 ”それよりここを出なきゃ!” |
彼女: | 友人の緊迫した声に気圧されて、思わず扉を開ける。 |
SE | (SE〜扉を開く音/と同時にクラッカーの音と歓声) |
全員: | 「サプラ〜イズ!!」 |
彼女: | 「え?」 |
BGM | ♪インテリアドリーム |
彼女: | 扉の向こうには、モダンダンス部の仲間たちが勢揃いしていた。 |
全員: | 「ハッピーバースデー!!」 |
彼女: | 「あ・・・」 |
BGM | ♪インテリアドリーム |
彼女: | すっかり忘れていた・・・ そうか、今日は私の誕生日・・・ |
彼: | 「誕生日おめでとう」 |
彼女: | 「え〜!?」 |
彼女: | 整列した仲間たちの後ろから現れたのは、ヘプバーン! 3か月前にインテリアショップで見たアートを抱えた彼だった。 |
彼女: | 「やだ・・・」 |
彼: | 「事情を話したら家具屋さんがここまで運んでくれたんだ」 |
彼女: | 「あ、ありがとう・・・」 |
彼: | 「ここから君のアパートまでは一緒にクルマで持っていこう」 |
彼女: | 「うん・・・」 |
彼: | 「新しい君の1年が最高の1年になりますように」 |
彼女: | 「もう・・・これ以上泣かせるようなこと言わないで」 |
彼女: | 頭の中が整理できないほど、あまりにドラマティックな演出で、 私の21歳のアニバーサリーが過ぎていった。 |
SE | (拍手と歓声) |
全員: | 「おめでとう!!」 |