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ボイスドラマの内容
登場人物
- 女性(25歳)・・・Vチューバー。この春4月から名古屋市内の小学校で始まったキャリア授業でアバターのキャラクターを作りスーツを着て動かす授業を担当する。実は子供が苦手
- 男性(27歳)・・・22歳の新卒時に教員免許を取得。小学校で五年生の担任をつとめるとともに課外活動やボーイスカウトも含め積極的にいろいろな活動に取り組んでいる。この春新任の女性教諭にキャリア教育をお願いしている。子供が大好き
Story〜「遅れてきた春〜ねむりデザインLABO/前編」
<シーン1/小学校の教室> | |
SE | (学校のチャイム/小学校の教室) |
彼女: | 「みなさん、はじめまして。 私はVチューバーです」 |
SE | (小学校の教室/「おお〜」というどよめきがおこる) |
彼: | 「なんだ、みんな知ってるのか?ほら静かに! 一応、先生からも説明しておくぞ」 |
BGM | |
彼: | 小学校五年生の教室。 男の子も女の子も、みんな興味津々だ。 今回お願いしたのは、女性のVチューバー。 顔出しはNGなので覆面をしている。 元々は、お芝居とかダンスをするのが生業(なりわい)だそうだ。 それでも最近は、芝居よりVチューバーの方が忙しいという。 黒板と、生徒たちとの間には小さな衝立。 彼女はその向こう側へ移動して覆面を脱いだ。 事前にセッティングされたカメラの前に立つと 大型モニターの中のキャラクターが目覚める。 彼女の動きに合わせてキャラクターが踊りだした。 クラス中に歓声が上がる。 私は学年主任でこのクラスの担任教諭。 春からスタートしたキャリア教育の授業を担当している。 子供たちの視線を一斉に浴びながら キャラクターがポーズを決める。 エンターテインメント満載の授業。 1コーラスのボカロミュージックに合わせたダンスのあと、 彼女は再び覆面をして生徒たちの前に立った。 |
彼: | 「今度はみんなにもキャラクターを動かしてもらいましょ」 どよめきと大歓声。 そのあとは、順番争いが起きるほど、大いに盛り上がった。 |
SE | (学校のチャイム/夕暮れのイメージ/カラスの鳴き声とか) |
彼: | 「先生!」 |
彼女: | 「あ、はい・・・」 |
彼: | 2コマ連続の授業。 終わって帰ろうとするVチューバーを呼び止めた。 |
彼女: | 「なんでしょう?」 |
彼: | 「今日はどうもありがとうございました」 |
彼女: | 「いえ、こちらこそ。 あんな感じでよかったのかしら」 |
彼: | 「はい。 子供達があんなに目をキラキラさせたの、ホント久しぶりです」 |
彼女: | 「そうですか」 |
彼: | 「あ、よかったらお茶でも飲んで少しお話しませんか? あと15分でホームルーム終わりますから」 |
彼女: | 「ありがとうございます。 でも、ちょっと今日は・・・先約がありますので。 また誘ってください」 |
彼: | 「そうですか・・・ わかりました。じゃあまた今度。きっとですよ」 |
彼: | 考えるより先に言葉が出てしまった。 ちょっと強引すぎたかな。 彼女は曖昧な笑顔で校門をあとにした。 |
<シーン2/ねむりデザインLABO> | |
SE | (店内の雑踏) |
彼: | 放課後のホームルームが思ったより早く終わったので いつもの家具屋さんへ足を向ける。 行き先はこれまたいつものベッドコーナー。 ねむりデザインLABO、というらしい。 最放課後のホームルームが思ったより早く終わったので いつもの家具屋さんへ足を向ける。 行き先はこれまたいつものベッドコーナー。 ねむりデザインLABO、というらしい。 最近ずうっと寝不足で体調が悪い。 枕を変えて少しは眠れるようになったけど、 首・肩・腰の痛みは慢性的になってきてるなあ。 そんなことを思いながら、 デザイン的に並べられたベッドを見ていたとき。 電動ベッドに横になる女性に目がいった。 くつろいで目を瞑るスレンダーな寝姿。 思わず近寄っていくと・・・ |
彼女: | 「あ・・・」 |
彼: | 「あれ? 先・・生?」 |
彼女: | 「え?」 |
彼: | 「僕です。今日キャリア授業でお世話になった小学校の・・・」 |
彼女: | 「ああ、担任の。 いやあね、こんなところを見られちゃうなんて」 |
彼: | 「いえいえ、それにしても奇遇ですねえ。 先生も家具屋さんにいらしてるなんて」 |
彼女: | 「はあ・・・。 あのう・・・」 |
彼: | 「はい」 |
彼女: | 「その、”先生”と呼ぶの、やめていただけません?」 |
彼: | 「え」 |
彼女: | 「私、そんな、先生なんて呼ばれるような人間じゃないので」 |
彼: | 「あ、これは失礼。 講師としてお招きしているのでつい」 |
彼: | しまった。なんか気まずいかな。 |
彼女: | 「あ、いえ、そんなつもりじゃないので」 |
彼: | 起きあがろうとする彼女を制して声をかける。 |
彼: | 「あ、そのままそのまま。 ところで先生、じゃなくて、 あ、あなたもベッドを探しているんですか?」 |
彼: | 彼女は小さく微笑みながら、うなづく。 |
彼: | 「ひょっとして眠りの悩みがあるとか?」 |
彼女: | 「はい。Vチューバーって仕事がら首・肩がいつも凝っちゃうんです」 |
彼: | 「ああ!実は僕もなんです!」 |
彼女: | 「先生も?」 |
彼: | 「授業って立ちっぱなしでしょ。 しかも黒板って、割と上を向いて書いたりするので」 |
彼女: | 「へえ〜」 |
彼: | 「首・肩と、腰、かな」 |
彼女: | 「全部じゃないですか」 |
彼: | 「そうなんです。だからよくここへきて相談してるんです」 |
彼女: | 「相談?」 |
彼: | 「はい。スリープアドバイザーに」 |
彼女: | 「まあ。先生も・・・」 |
彼: | 「え?ってことは・・・」 |
彼女: | 「ええ。私もスリープアドバイザーに相談してます」 |
彼: | 「そうなんだー」 |
彼女: | 「先週は、頭の形を測ってもらいました。 首のS字の深さもわかるので、枕を変えてみたんです」 |
彼: | 「あ、僕もそれやりました。 今使ってる枕の高さ、 全然合ってなかったのがわかって、ショックだったなあ」 |
彼女: | 「おんなじですね」 |
彼: | 「ほんとですね! 実はいま、ベッドも買い換えようかと思ってて」 |
彼女: | 「どんなベッドを検討してるんですか?」 |
彼: | 「なんか、いろんな種類があるみたいなんで、迷ってます」 |
彼女: | 「体圧分散してくれるのがいいって聞きました」 |
彼: | 「体圧分散! 僕、骨太なんで、それすごく重要です。 電動ベッドはどうですか?」 |
彼女: | 「すっごく気持ちいい。 宙に浮いてるみたい」 |
彼: | 電動ベッドの足と背中をリクライニングさせながら うっとりした表情で彼女が答える。 |
彼: | 「あ、それいいかも」 |
彼女: | 「じゃあ、一緒にスリープアドバイザーに相談してみましょうか」 |
彼: | 「はい!」 |
彼女: | 「そんな、敬語っぽい話し方じゃなくていいですよ。 先生の方が、年上なんですから」 |
彼: | 「ああ、はい、わかりました。 じゃあ、僕からもひとつ、いやふたつお願いしていいですか?」 |
彼女: | 「なんでしょう」 |
彼: | 「僕のことも”先生”って呼ぶの、やめてください」 |
彼女: | 「え、だって、先生じゃないですか」 |
彼: | 「いまは先生じゃないですよ」 |
彼女: | 「なんて呼べばいいんですか?」 |
彼: | 「なんでもいいです。先生以外なら。名前でも・・・」 |
彼女: | 「え?」 |
彼: | 「あ、いえいえ。なにも」 |
彼女: | 「もうひとつのお願いは?」 |
彼: | 「ああ、えっと、 このあと、お茶でもしながら、もう少しだけお話しませんか」 |
彼女: | 「あ・・・」 |
BGM | 「インテリアドリーム」 |
彼: | あ。言っちゃった。 1日に2回も断られたら立ち直れないなあ。 でも、彼女から返ってきた答えは、僕の不安を吹き飛ばした。 |
彼女: | 「お茶っていうより、もう食事の時間ですね」 |
彼: | 「あ、それならもちろん!」 |
彼: | おもわず満面の笑みで答えてしまう。 遠くで僕たちを見ていたスリープアドバイザーが優しく微笑んでいる。 きっとものすごくわかりやすい表情をしていたのだろう。 彼女はベッドをリクライニングさせたまま吹き出した。 この日、この瞬間から、僕と彼女の物語はスタートした。 小学校の教師とVチューバー。 出演キャラの組み合わせとしては異色になるのかな・・・ 遅い春の予感は、僕の胸にときめきを運んできた。 |