「遅れてきた春〜ねむりデザインLABO/前編」 2024年6月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 女性(25歳)・・・Vチューバー。この春4月から名古屋市内の小学校で始まったキャリア授業でアバターのキャラクターを作りスーツを着て動かす授業を担当する。実は子供が苦手
  • 男性(27歳)・・・22歳の新卒時に教員免許を取得。小学校で五年生の担任をつとめるとともに課外活動やボーイスカウトも含め積極的にいろいろな活動に取り組んでいる。この春新任の女性教諭にキャリア教育をお願いしている。子供が大好き

Story〜「遅れてきた春〜ねむりデザインLABO/前編」

<シーン1/小学校の教室>
SE(学校のチャイム/小学校の教室)
彼女:「みなさん、はじめまして。
私はVチューバーです」
SE(小学校の教室/「おお〜」というどよめきがおこる)
彼:「なんだ、みんな知ってるのか?ほら静かに!
一応、先生からも説明しておくぞ」
BGM
彼:小学校五年生の教室。
男の子も女の子も、みんな興味津々だ。

今回お願いしたのは、女性のVチューバー。
顔出しはNGなので覆面をしている。
元々は、お芝居とかダンスをするのが生業(なりわい)だそうだ。
それでも最近は、芝居よりVチューバーの方が忙しいという。

黒板と、生徒たちとの間には小さな衝立。
彼女はその向こう側へ移動して覆面を脱いだ。
事前にセッティングされたカメラの前に立つと
大型モニターの中のキャラクターが目覚める。
彼女の動きに合わせてキャラクターが踊りだした。
クラス中に歓声が上がる。

私は学年主任でこのクラスの担任教諭。
春からスタートしたキャリア教育の授業を担当している。
子供たちの視線を一斉に浴びながら
キャラクターがポーズを決める。
エンターテインメント満載の授業。

1コーラスのボカロミュージックに合わせたダンスのあと、
彼女は再び覆面をして生徒たちの前に立った。
彼:「今度はみんなにもキャラクターを動かしてもらいましょ」

どよめきと大歓声。
そのあとは、順番争いが起きるほど、大いに盛り上がった。
SE(学校のチャイム/夕暮れのイメージ/カラスの鳴き声とか)
彼:「先生!」
彼女:「あ、はい・・・」
彼:2コマ連続の授業。
終わって帰ろうとするVチューバーを呼び止めた。
彼女:「なんでしょう?」
彼:「今日はどうもありがとうございました」
彼女:「いえ、こちらこそ。
あんな感じでよかったのかしら」
彼:「はい。
子供達があんなに目をキラキラさせたの、ホント久しぶりです」
彼女:「そうですか」
彼:「あ、よかったらお茶でも飲んで少しお話しませんか?
あと15分でホームルーム終わりますから」
彼女:「ありがとうございます。
でも、ちょっと今日は・・・先約がありますので。
また誘ってください」
彼:「そうですか・・・
わかりました。じゃあまた今度。きっとですよ」
彼:考えるより先に言葉が出てしまった。
ちょっと強引すぎたかな。
彼女は曖昧な笑顔で校門をあとにした。
<シーン2/ねむりデザインLABO>
SE(店内の雑踏)
彼:放課後のホームルームが思ったより早く終わったので
いつもの家具屋さんへ足を向ける。
行き先はこれまたいつものベッドコーナー。
ねむりデザインLABO、というらしい。
最放課後のホームルームが思ったより早く終わったので
いつもの家具屋さんへ足を向ける。
行き先はこれまたいつものベッドコーナー。
ねむりデザインLABO、というらしい。
最近ずうっと寝不足で体調が悪い。
枕を変えて少しは眠れるようになったけど、
首・肩・腰の痛みは慢性的になってきてるなあ。
そんなことを思いながら、
デザイン的に並べられたベッドを見ていたとき。
電動ベッドに横になる女性に目がいった。
くつろいで目を瞑るスレンダーな寝姿。
思わず近寄っていくと・・・
彼女:「あ・・・」
彼:「あれ?
先・・生?」
彼女:「え?」
彼:「僕です。今日キャリア授業でお世話になった小学校の・・・」
彼女:「ああ、担任の。
いやあね、こんなところを見られちゃうなんて」
彼:「いえいえ、それにしても奇遇ですねえ。
先生も家具屋さんにいらしてるなんて」
彼女:「はあ・・・。
あのう・・・」
彼:「はい」
彼女:「その、”先生”と呼ぶの、やめていただけません?」
彼:「え」
彼女:「私、そんな、先生なんて呼ばれるような人間じゃないので」
彼:「あ、これは失礼。
講師としてお招きしているのでつい」
彼:しまった。なんか気まずいかな。
彼女:「あ、いえ、そんなつもりじゃないので」
彼:起きあがろうとする彼女を制して声をかける。
彼:「あ、そのままそのまま。
ところで先生、じゃなくて、
あ、あなたもベッドを探しているんですか?」
彼:彼女は小さく微笑みながら、うなづく。
彼:「ひょっとして眠りの悩みがあるとか?」
彼女:「はい。Vチューバーって仕事がら首・肩がいつも凝っちゃうんです」
彼:「ああ!実は僕もなんです!」
彼女:「先生も?」
彼:「授業って立ちっぱなしでしょ。
しかも黒板って、割と上を向いて書いたりするので」
彼女:「へえ〜」
彼:「首・肩と、腰、かな」
彼女:「全部じゃないですか」
彼:「そうなんです。だからよくここへきて相談してるんです」
彼女:「相談?」
彼:「はい。スリープアドバイザーに」
彼女:「まあ。先生も・・・」
彼:「え?ってことは・・・」
彼女:「ええ。私もスリープアドバイザーに相談してます」
彼:「そうなんだー」
彼女:「先週は、頭の形を測ってもらいました。
首のS字の深さもわかるので、枕を変えてみたんです」
彼:「あ、僕もそれやりました。
今使ってる枕の高さ、
全然合ってなかったのがわかって、ショックだったなあ」
彼女:「おんなじですね」
彼:「ほんとですね!
実はいま、ベッドも買い換えようかと思ってて」
彼女:「どんなベッドを検討してるんですか?」
彼:「なんか、いろんな種類があるみたいなんで、迷ってます」
彼女:「体圧分散してくれるのがいいって聞きました」
彼:「体圧分散!
僕、骨太なんで、それすごく重要です。
電動ベッドはどうですか?」
彼女:「すっごく気持ちいい。
宙に浮いてるみたい」
彼:電動ベッドの足と背中をリクライニングさせながら
うっとりした表情で彼女が答える。
彼:「あ、それいいかも」
彼女:「じゃあ、一緒にスリープアドバイザーに相談してみましょうか」
彼:「はい!」
彼女:「そんな、敬語っぽい話し方じゃなくていいですよ。
先生の方が、年上なんですから」
彼:「ああ、はい、わかりました。
じゃあ、僕からもひとつ、いやふたつお願いしていいですか?」
彼女:「なんでしょう」
彼:「僕のことも”先生”って呼ぶの、やめてください」
彼女:「え、だって、先生じゃないですか」
彼:「いまは先生じゃないですよ」
彼女:「なんて呼べばいいんですか?」
彼:「なんでもいいです。先生以外なら。名前でも・・・」
彼女:「え?」
彼:「あ、いえいえ。なにも」
彼女:「もうひとつのお願いは?」
彼:「ああ、えっと、
このあと、お茶でもしながら、もう少しだけお話しませんか」
彼女:「あ・・・」
BGM「インテリアドリーム」
彼:あ。言っちゃった。
1日に2回も断られたら立ち直れないなあ。
でも、彼女から返ってきた答えは、僕の不安を吹き飛ばした。
彼女:「お茶っていうより、もう食事の時間ですね」
彼:「あ、それならもちろん!」
彼:おもわず満面の笑みで答えてしまう。
遠くで僕たちを見ていたスリープアドバイザーが優しく微笑んでいる。
きっとものすごくわかりやすい表情をしていたのだろう。
彼女はベッドをリクライニングさせたまま吹き出した。

この日、この瞬間から、僕と彼女の物語はスタートした。
小学校の教師とVチューバー。
出演キャラの組み合わせとしては異色になるのかな・・・

遅い春の予感は、僕の胸にときめきを運んできた。
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