「天の川の約束〜IROTTA CHIC」後編 2023年7月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 女性(39歳)・・・IT企業でWebデザイナーをしている。彼とはつきあって2年目
  • 男性(37歳)・・・大手弁護士事務所で働くジュニア弁護士。シニアを目指している

Story〜「天の川の約束〜ねむりデザインLABO/後編」

<シーン1/女性39歳/男性37歳>
女性:「それじゃまた・・・」
男性:「ああ。また来年」
女性:今年も私たちの逢瀬は終わった。
一年に一度。
牽牛・織女(けんぎゅう・しょくじょ)の伝説のように、
天の川を超えて彼に会いにいく。
こと座のベガ、わし座のアルタイル。
これに、はくちょう座のデネブを加えた、
”夏の大三角”が東の空へ昇るころ、私は機上の人となる。
機内アナ
ウンス:
当機は今、中部国際空港への着陸態勢に入っております。
天気は晴れ、時間は9時5分です。
お座席、テーブルは元の位置にお戻しになり、シートベルトをご着用ください。
女性:次の年も約束の日がめぐってきた。
紙のタンブラーからエスプレッソを飲み干し、
スマホでモバイルチケットを確認する。
今日はいつもの往復搭乗券ではない。
大切な話を彼にするために、片道(ワンウェイ)チケットだ。
女性:早く会いたい。彼の顔が見たい。
ボーディングブリッジを通り、到着ゲートを抜け、
検疫検査、入国審査をすませ、手荷物を受け取って到着ゲートへ。
私は足早に到着ロビーで待つ彼の元へ・・・

え・・・いない・・・?
彼の姿が見当たらない。
いつもミーティングポイントの一番前で私を出迎えてくれるのに。

時間まちがえてる?
ううん、仁川(インチョン)でトランジットの際に、LINE入れてるもん。

不安な思いが一気にからだ中をかけめぐる。
まさか事故にでもあったのかしら?
だめだめ、不吉なこと考えちゃ。
いいわ、30時間のフライトでくたくたなんだから、
カフェでお茶でも飲んで落ち着きましょう。
女性:あ、LINE。彼だわ。

え?プレミアムラウンジにいる・・・?
どういうこと?
男性:「こっちこっち」
女性:「どうしたの?ラウンジなんかで」
男性:「実は見せたいものがあるんだ」
女性:「なに?」
男性:「これ・・・」
女性:「なにこれ?」
男性:「L.A.の弁護士事務所からのオファーだよ」
女性:「え・・・どういうこと?」
男性:「僕もL.Aに行く」
女性:「え〜!」
男性:「もう離れていたくないんだ」
女性:「そんな・・・」
男性:「一緒にいたいんだ」
女性:「でも・・・」
男性:「でも?・・・同じ気持ちだと思ったのに・・・」
女性:「同じ気持ちだよ」
男性:「じゃあどうして・・・」
女性:「だって私、もうL.Aに戻らないつもりで帰ってきたんだもん」
男性:「え・・・」
女性:「片道(ワンウェイ)チケットの理由は、L.A.の支社を退職してきたから。」
男性:「えっ」
女性:「年に一度の逢瀬で我慢できるほど、私は若くない。
会社に伝えた退職理由は、ベッドとマットレス。
”外国人の体型に合わせたマットレスでは、とても熟睡できません。
何年ものストレスで身も心もくたくたです”
これがオフィシャルな理由だ。まあ、間違いではないけれど。
でも本当は・・・ただただあなたに会いたい!」
男性:「そうだったんだ・・・」
女性:「そうよ。だからL.A.からのオファー、ことわって」
男性:「え〜」
女性:「まずは、インテリアショップへ行きましょ。
2人でゆったり寝られるサイズで
体を包み込むようなコイルスプリングのマットレス、買わなきゃ」
男性:「え・・・ってことは・・・」
女性:「1分でも1秒でも、長く一緒にいたいの」
男性:「異議なし」
女性:私たちはコーヒーを何杯もおかわりしながら、これからのことを話し合った。
一番近い未来の予定はもちろん、インテリアショップ。
2人だけの生活の準備、はじめないと。
彼の腕にくっつきながら、私はもうワクワクがとまらない。
幸せはこうやって自分の手でつかんでいく。
それが私の生き方だから。
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