「風立ちぬ〜KICHI/後編」 2024年5月

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ボイスドラマの内容

登場人物

  • 彼女(22歳)・・・この春から新社会人一年生。養護老人ホームで働きながら来年社会福祉士の資格をとり、市の社会福祉協議会へ転職したいと考えていたが・・・
  • 彼(25歳)・・・広告会社に勤めて足かけ4年でこの春起業した。Web解析士の資格を取得してホームページ制作・管理とSNSマーケティングの仕事で走り回るが・・・

Story〜「風立ちぬ〜KICHI/後編」

<シーン1/堤防沿いを歩くカップル>
SE(小川のせせらぎ)
彼女:「風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」
彼:「なんだい、それ?
そんなアニメもあったっけ」
彼女:「もう〜。
マーケターならそのくらい知っててよ」
彼:「知ってるよ。詩だろ」
彼女:「そう。ポール・ヴァレリーの詩。
うちの入所者さんに、この詩が好きな人がいるの」
彼:彼女は、この春から養護老人ホームで働いている。
仕事はやりがいがあるって言ってたけど、実際には大変そうだ。
肉体的にも精神的にも。
だって、彼女が働き出してから、デートしたのは今日がはじめて。
もう5月だというのに。
体壊さないといいけど。
彼女:「なあに?黙っちゃって。
あ、また、私の仕事のこと考えてるんでしょ」
彼:「いや、そうじゃないけど」
彼女:「うそばっかり。
働き方改革に逆行した ブラックな業界だって言いたいんでしょ」
彼:「そんなこと思ってないって」
彼女:「だって、顔に書いてあるんだもん」
彼:「ひどい誤解だな。
福祉業界が大変だってことくらいわかってるよ」
彼女:「じゃあ、なんでそんな、眉間に皺が寄るの」
彼:「君は僕が起業したこと、忘れてない?」
彼女:「忘れているわけないじゃない。
一緒にお手伝いしたんだもの」
彼:「うん。すっごく嬉しかった。
書類作るのとか手伝ってくれて。
この恩は一生忘れないよ」
彼女:「おおげさだなあ。
それで、順風満帆なんでしょ」
彼:「まあだいたいはね。
いい風が吹いてるよ」
彼女:「さわやかな大気が海より湧きあがり、わたしに魂を返す」
彼:「お!ポール・ヴァレリー。
まあ、そうなんだけどね。
一人でやっていくのは大変なんだな、やっぱり」
彼女:「そうなの」
彼:「うん。営業も、データの分析もすべてひとりだからな」
彼女:「ふうん」
彼:あんまり細かく語り出すと、ただの愚痴になっちゃうからなあ。
実際には、自分の労務管理とか経理とかやらなきゃいけないし。
外で打合せしてオフィスに帰ってきてからデータの分析して、レポート作ってると夜中の12時を回っちゃう。
この前なんて目を充血させて打合せしてたら、クライアントが僕の目ばっかり見るもんだから、話が全然進まなかったからなあ。
彼女:「あ?ひょっとして・・・眠れてないんじゃない?」
彼:「え」
彼女:「図星でしょ」
彼:「あ、まあね。そりゃこのライフスタイル見てたらわかるよなあ」
彼女:「実は私もついこの前まで不眠症に悩んでいたんだ」
彼:「そうなの?」
彼女:「うん。今はぐっすり眠れているけどね」
彼:「ホント?なにをしたの?」
彼女:「なら、いまから治療にいきましょうか」
<シーン2/インテリアショップ>
彼:彼女が連れてきてくれたのは、
病院ではなく、なんとインテリアショップ。
放射状にディスプレイされたベッドの前でスリープアドバイザーがわかりやすく説明してくれる。

不眠の症状について。うん。
寝つきが悪く、ベッドに入っても30分以上眠れない。(眠れない)
途中で目が覚めて、なかなか寝付けない。(寝付けてないな)
朝早く目が覚めてしまう。(うん)
ぐっすり眠った気がしない。
彼女:「ちょっと〜、やばくない?
全部あてはまってるじゃん」
彼:それから、不眠の原因。
痛みをともなう関節炎やリウマチ。
花粉症や蕁麻疹。
そして、ストレス。
彼女:「やっぱストレスだよね」
彼:で、不眠の対処法。
花粉症やアレルギー性鼻炎は薬を処方してもらってる。
ストレスは根本的な原因が自分だから、ライフスタイルを変えるしかない、、、か。
彼女:「あとできることは、寝具のチェックだね」
彼:そう言って、彼女はウインクした。
片手に測定器を持ったスリープアドバイザーが僕の頭の形を測る。
そうか。
僕の頭、こんな形をしていたんだ。
彼女:「ひょっとして、枕が高いんじゃない?」
彼:あ、そうかも。
毎朝起きたときに、首とか肩が凝ってるもんなあ。
スリープアドバイザーは僕にフィットする枕をチョイスしてくれた。
マットレスと首の角度が5度っていうのが、快眠へ誘うんだって。
実際に寝てみても、うん首が疲れない感じ。
あぁ、そういうことなんだな。
彼女:「あなた、オフィスに泊まってたりしてない?」
彼:「うん。遅くなると帰るの面倒だから」
彼女:「ってことは、ソファベッドで寝てるでしょ」
彼:「うん、だって、オフィスにはそれしかないもん」
彼女:「ソファベッドは仮眠用よ。ちゃんとお家のベッドで寝なさい」
彼:「うん、わかってる」
彼女:「そのマットレスも要検討かな」
彼:「え?なんで?」
彼女:「まあまあまあ。このベッドに寝てみて」
彼:言われるまま横になる。
あれ?
ふにゃふにゃってわけじゃないのに、体が包み込まれる感覚。
彼女:

「どんな感じ?」

彼:「(うん)力がすうっと抜けていく感じ」
彼女:「ポケットコイルって言うんだって」
彼:「へえ〜」
体圧分散性が高い、というのが売りらしい。
確かに、骨の部分がゴツゴツあたる感じも全然ないし、自然な寝心地。
彼女:「硬さも選べるらしいよ」
彼:「僕は硬めがいいな」
彼女:「ふふふ」
彼:「どうしたの?」
彼女:「私とおんなじ」
彼:この感覚、すごく気持ちがいいな。
今日家に帰ったら、思い出して比べてみよう。
彼女は無理にすすめるわけでもなく、ただただ僕をみつめて笑っていた。
<シーン3/公園のベンチに佇むカップル>
SE(小鳥のさえずり)
彼女:「で、結局マットレスはどうしたの?」
彼:「うん、ナイショ」
彼女:「もう〜」
彼:「でも、不眠は治ったよ」
彼女:「え?じゃあ・・・」
彼:「今度、うちへ遊びにおいでよ」
彼女:「ふふ。社会福祉士の試験に合格したらね」
彼:「試験っていつだっけ?」
彼女:「来年の春よ」
彼:「そうか。
それじゃあ僕もそれまでにいろいろ準備しなきゃ」
彼女:「まだやらなきゃいけないことがあるの?」
彼:「ああ。すっごく大事なことがね」
彼女:「なあに?」
彼:

うん、それも内緒

彼女:「ひどーい」
彼:「まず最初にしないといけないのは・・・」
彼女:「もう〜。もったいぶらずに教えてよ」
彼:「君の家にご挨拶にいく」
彼女:「え・・・」
BGM♪インテリアドリーム
彼:「ご両親、お付き合いを認めてくれるかな」
彼女:「・・・いきなりだとびっくりするかもね」
彼:「じゃ君からマーケティングリサーチしておいてよ」
彼女:「やあねえ、その言い方」
彼:「ちなみに、お父さんってこわい?」
彼女:「私にはすっごく優しいわよ〜。
きっと彼氏には ちょっと強面だけど」
彼:「強面・・・ようし。
風を思いっきり吸い込んで立ち上がるぞ。
風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」
彼女:「ふふ。ありがとう」
彼:彼女の表情は終始明るかった。
僕は自分の胸に誓う。
これからもその笑顔のために生きねばならぬ。と。
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